恋愛妄想
ダメだ。
絶対 くる。
好きに なる。

アパートに着くと高田君は
「じゃあ…また明日…」
と言って手を振った。

「うん…また明日…」



「って、そんだけ?今時中学生でもそれはない!」
リカは携帯の向こうで大笑いしている。
「でもさ、高田ってホントにいいヤツかもね、私は応援する」
「そういうの、いいから」
「なんで?自分から幸せ放棄したらダメだよ…」
リカの言葉が耳に残ってその夜は眠れなかった。


その日から暫くして、あたしはリカと高田君と
雑誌に載っていた新オープンのアジア料理店に行った。
あたしが普段から親しくしている同じ職場の男友達も一緒だった。

案の定、帰りは終電になり
路線が同じのあたしと高田君が駅に取り残された。

あたしは 高田君を好きになっていた。
だからか
いつもより無口になっていた。
いつになく「好き」をアピールし始めていた。
二人きりになって後悔していた。

高田君は やさしい。
高田君は やさしい。
あたしは 同じ間違いはしない。
空回りしたり しつこくしたりして
嫌われたくない。

ただ 一緒にいたい。

「なんか、今日…無口ですね」
駅のホームで電車を待っている。
人影はまばらで、ホームのイスに座って
高田君が呟いた。

「えっ、そうかな」
「そうですよ」

沈黙。
話を、なんでもいいから、話を…

「生田さんって明るいし、面白いし」
「そんなことないよ!」
「いや、面白いし!」
挙動不審とか 意味不明とはリカによく言われるけど…
「そんなことないよ…」
「僕は…無口で…
気の利いた事もいえない詰まらない人間です…

それでもいいですか?」
「えっ?」
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