後ろの迫田くん
教室に入ると今朝同様、あちこちに生徒の塊が出来ていた。

少し違うのは、あたしの席の前に山口が座っていた。

「おはよ。」

あたしは自分の席に座り、ボーっとする頭でコクンと頷いた。

「また屋上?」

また頷くと山口に「後ろ向いて。」と言われた。

「でっ!」

言われた通り首を捻り後ろを向くと、「違う。」と後頭部を叩かれた。


「背中汚れたまんま。どうせ払わないで来たんでしょ。」

「ほら。」と言いながら、あたしを立たせ後ろを向かせると、パンパンと制服の汚れを払ってくれた。

「女の子なんだから。汚れぐらい払おうよ。」

母親みたいな事を言いながら、あたしの身だしなみを整えてくれた。

「取れたよ。」

「うむ。」

「華の女子高生でしょ。」


『華』が付くかどうかは別として、あたしは女子高生だ。

「うむ。」と返事して、お昼ご飯を掴もうと思ったら異変が起きていた。

「っ!!」

座って机に手を伸ばすと消えていたのだ。

空を掴んだ掌をグッパグッパさせていると、

「これでしょ?」

山口が座っている席の机の上にあるコンビニ袋を差し出した。

何故だろう?朝は自分の席に置いたはずなのに。不思議な事が起こるもんだ。

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