後ろの迫田くん
たじろーはあまり喋らないから、何を思っているのか分からない。


「う~ん、う~ん。」


考えていると扉が開く音がした。


「たじろー。」


扉の方を向くと、みっちゃんだった。


「なかなか来ないから帰ったのかと思った。」

「帰ろ?」


みっちゃんは側に来て右手を差し出した。

なかなか立ち上がらないあたしに、


「ね、帰ろ。」


再度促した。




まだ、たじろーが戻って来ていない。


「迫田先輩待ってるの?」

「うん。」

「そっか。」


あたしに優しいみっちゃんだから、諦めてくれると思った。

先に帰るか、一緒に待っててくれるか。どっちかだと思った。

だけど違った。

あたしの腕を掴み、無理矢理立たせた。


「みっちゃん!?」


ビックリした。

いけない事すると駄目だって厳しく言うけど、あたしがしたい事には何も言わず自由にさせてくれてたから。


「迫田先輩はまだ戻って来ないと思うよ。」

「みっちゃん?」

「だから帰ろ。」


何でまだ戻って来ないって思うの?


「・・・。」


立たされても、足は動かす気になれなかった。




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