ヒストリーラブ
転校生
悠李
「り、起きなよ」
「んん…」
「悠李、先生来るから起きなって。」
「んあ…」
暗い視界が一気に明るくなった眩しさに目を細める。
「ん…シリクス…」
寝起きでぼーっとした頭で視界に入ってきた顔の名前をポツリと呟いた。
「おはよ、悠李」
にっこり笑ったシリクスにぼんやりしながら笑い返す。
「はよ、慧大」
授業が始まれば、シリクスとデュランは終わり。
相澤慧大と天川悠李のの世界だ。
あまり呼んでたら、みんなにバレるし、何より自分がデュランだけの人格になってしまうから。
ジャージをくるくると丸めてカバンに直すシリクスをぼーっと見る。
昔の面影がありすぎて、シリクスとしか認識できない。
実はこれが本音。
隣の席のアリアがにっこり笑いながら櫛を渡してくれた。
「軽く整えたら?」
そう言って頭を指したアリアにコクンと頷く。
前世が男だったからか身だしなみには疎いんだ。
悪かったな。
髪に櫛を通しながら窓の外を見ようと目を向ければ、
「席着けー」
先生の声が聞こえたから窓の外はちらっとしか見えなかった。
「おし、全員いるなー」
大きな声で言う先生から目を反らしてアリアに櫛を返した。
「ありがと」
アリアがいいよって櫛をポーチに直すのを見届けて前を見たら、いつの間にか先生の話が進んでいたようで、周りがざわついていた。