好き、と言えば、

 「な、によ、それ・・・」

 唇を噛み締める。ここで泣くのは間違ってる。
 我慢しなきゃ・・・



 「なあ・・・どうしても行くのか?」


 甘い声で囁く。まさにアメとムチ。
 
 だけど、光輝にとってあたしは・・・幼なじみ。
 だったらもう自分の意地を通すしかない。



 「行くよ、だから離して」

 素直になるなんて、できない。


 「・・・わかった」






 期待してたんだ。「行くな」って言ってくれるのを。
 あたしは馬鹿だよ、ほんとに。



 「悪ふざけはお終い。とっととうち行くぞ」

 パッとあたしを離すと、部屋から出て行った。



 なんて最悪最低なやつなの?
 だけど、嫌いになれない。

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