キミを唄う...









「1年5組の松本くん、松本晴輝くん。至急、会議室に来なさい」

放課後 晴輝は暴力事件のことで 呼び出しをくらった

はっきり言って めんどくさいし 怒鳴った教師に会いたくない

溜息を付きながら 会議室に続く道を歩き始めた

「ねぇ…あの人でしょ?」

「先生殴った人って…」

「怖いよねー」

周りから浴びる 冷たくバカにされた視線が 体にヒシヒシと伝わる

――殴ってやりてぇ…

ポケットに手を突っ込んで ズカズカと歩く彼を すれ違う人は ジッと見つめてきた

口の中にあるガムを噛んで 少しでも苛立ちを抑えていた

「千尋!あんたはさ、あそこで怖い顔してる人みたいにならないでね★」

廊下を歩くカップルが 晴輝を見ながら笑っていた

――うぜぇ…っ

『おい女…てめぇケガしたくなきゃ黙ってろよ…――』

カップルの女の方が ビクっとしながら怖がっていた

その姿を 見届けてから晴輝は歩き出した

しかし――

「女子を脅すなんて…まじウザイんですけど!?」

――は?

晴輝は 彼女の顔を壁に押し付け 耳元で呟いた

『――…俺に喧嘩売ってるの?』

辺りは沈黙に襲われた

彼女は 首を左右に振っていた

一瞬で彼女の顔が 青ざめてゆくのがわかった

その姿が…実におもしろい

『今度また俺の視界に入ったら…ただじゃおかないから…』

晴輝は 彼女を放して 会議室に向かった

数秒経った後 彼女は恐怖のあまり泣き出したんだ…

初めて“死”を目の前にした人のようだった

『しょせん…その程度だ…』

晴輝の表情は より険しくなっていった――
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