キミを唄う...



校庭の隅にある蛇口で 晴輝と雄一は 水浴びをしていた

屋上での喧嘩で血が出た部分を洗っていたのだ

「うっ…血が止まらんねーっ」

排水されてゆく 赤く染まった水がなんとなく 自分のものではないような気がして たまらない

――これ…俺のものか?

あまりにも赤々しくて 血らしい血だった

“性格が悪い人の血は 赤黒い”と聞いたことがあるのだが 晴輝のは すんだ色をしていた

――わかっているんだ

――自分が最低の人間だなんて…

――なのに…

実際は 違った――

“信じられない”その言葉でいっぱいだった

「…晴?風邪引くぞ?」

『ぇ…ぁあ…』

キュッと鳴らしながら 蛇口を閉めた

髪の毛についたままの水滴が 風に流されて 涼しい…

『屋上に行くか?』

「また授業サボるん?」

『だって…授業出たくないし――』

雄一は 微かに笑顔を見せて

「俺も」

チャイムが鳴った

それでも晴輝と雄一の耳には その音が聞こえてなかった

いや…聞く気がなかったのかもな…








夏の日差しと 心地よい風に誘われて いつのまにか晴輝と雄一は 深い眠りについていた

薄っすらと開いてく自分の視界の先に なにやら人影があった

それに 顔に違和感を感じた

――なんだ?顔に…

まぶたを開くと 1人の女がいた
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