キミを唄う...
「…そっか」

『別にあんたが悪いわけじゃないけど、昔色々あったからね。ごめんな』

カナは すっかり黙り込んでしまった

内気な性格と千沙には聞いたけど 本当だった…

しかし 晴輝は彼女に 1言も心配の声をかけなかった

その時 晴輝は水道での自分の血のことを思い出した

――隣にいる子が辛い顔をしているのに 全く相手にしない“最低な自分”――

――わかっているんだ

――自分が昔に比べて どんなに最低か

――なのに…どうして俺の血は“赤色”なんだ…?

――なんで“赤黒い”色をしているんだ…?

ゆっくりカナの方に顔を向けた

『去年の俺だったら…声をかけただろうな…』

彼女に聞こえないように 小さく呟いた

そう…あの“癖毛”の子の時のように なんで声がかけられないんだ…

そして どこまでも広がる空を見上げたんだ…

すると 晴輝は“あること”を思い出した

――あの癖毛と、“また会う”って約束したはずなのに

――今、あいつはどこにいるんだ?

こんなに期待するくらい 晴輝は“癖毛”を思っている

たった1回会っただけなのに 彼の心は 彼女でいっぱいになったんだ

――もう1度会いたい…

最後に癖毛が言った言葉――

“――…今度会えたら言うよ”

その言葉を信じて今も 彼女が路上ライブを行ってるんだ…
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