キミを唄う...
しばらく弾いていたら 晴輝と同じくらいの身長の女の子が 彼の隣に腰をかけた
――…小学生?
ちょっと頭に彼女のことが入ってきそうになったけど それをもみ消すように ギターを弾いた
「――…っ…ぅ……っ…』
隣の女の子は 急に泣き出した
――なんか…嫌なことでもあったのかな…?
さすがの晴輝も 隣で泣いている子をほっとけなかったから そぉっと 彼女の顔を覗いてみた…
すると…―――
彼女は 目を涙でいっぱいにして 晴輝の顔を見上げた
その表情に 俺は 見とれてしまった…
「…っ…なによ~…」
『いや…なんでもないけど…』
今まで散々泣いていたのに 今度は「バカ」と連呼しながら 怒りだした
――…変な奴
これが 俺から見た 彼女の第一印象だったんだ
黒の癖毛で パーマをかけているような髪形
ニキビ1つない 白い肌
長いまつ毛が強調される 大きい瞳…
『…こんな時間に、何してんの?』
「質問した人から答えなさいよ…」
命令口調で 気分やな女の子
晴輝には 軽く迷惑な子だった
――話し掛けなければよかった…
深い溜息をついて 晴輝は口を開いた
『俺は、ここで路上ライブしてるの!』
「路上…ライブ?」
『そうだよ…文句あっか?』
左右に髪の毛をなびかせながら 首を振っていた
『あんたは、何してんの?』
彼女は 肩を撫で下ろして「…喧嘩」とだけ呟いた
『誰と?』
「ママ…」
『くだらねー…低レベルだなー』
すると 彼女は 目をカッと開いて 怒鳴ったんだ…
「あんたは…ママと仲いいからそうゆうこと言えるんだよ!…うちは……うちは…っ…」
そして…泣き出したんだ…
溢れ出してくる涙を 懸命に拭って… 声をあげないように 唇をかみ締めて…
晴輝は 空に向かって『母さん…か』と――
賑やかな町が 一瞬 何も聞こえなくなった気がした