キミを唄う...










住宅地が広がる 暗い路地…

蛍光灯の周りには 虫が数十匹集っていた

「やっぱいいよー…」

『…次の道どっち?』

「――左…」

すると すぐさまに晴輝は 左に曲がった

会話の1つないの空気が 2人を包んでいた

「…なんで送ってくれたの?」

『別に、なんでもいいじゃん』

「だって…――」

彼女は 下に俯いた…

なんだか 物足りなさそうに足元にある石ころを蹴っていて――

『…親父が』

そして 晴輝は 重そうに口を開いた

『親父が、“女には優しくしろ”って口癖なんだよ』

後ろ姿でよくわからなかったけど 恥ずかしそうに頬を赤めていた

そして 眉間に皺を寄せて 怒っていた

――なんでこんな癖毛に、そんなことを言わなきゃいけねーんだよ…

今までではありえなかった自分の態度に 晴輝は深い溜息をついた

「じゃあさ、さっさと先に行かないで…うちの隣で歩いてよ」

晴輝が呆れながら振り返ると 意味ありげな笑顔を見せていた…

――…まったく、何考えてるんだ?

「皆には優しくしてるんでしょ?うちにも優しくしてくれなきゃねー★」

『…仕方ねーなぁ…』

晴輝は めんどくさそうに彼女の隣についた

しかし 不思議と嫌ではなかったんだ――
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