そして約束のコトバをかわしましょう
第1章

幼き思い出

「うえっ・・・うわああああん  ママあああ・・・」

それは、時をさかのぼること10年。

私が5歳の時だった。

蒸すような暑さの8月、ある公園。
私はママと公園に出かけていた。

ママは近くのママ友と楽しそうにおしゃべりをしている。

他の友達は、ブランコや、鉄棒や、滑り台などで遊んでいる中
私は一人で砂場で遊んでいた。

それがいけなかった。

ざりざりと音を立てて私に近づく、影。

そいつは私の前に座るとにやりと笑ってこう言った。

「お嬢ちゃん、可愛いねぇ。
 おじさんについてきたら、お菓子。
 買ってあげるよ。」

友達の少なかった私には、おじさんが友達になってくれたようで嬉しかった。
まだ幼い私の頭では、これから起こることなど想像もつかない。

私はおじさんについて行ってしまった。

大きなワゴン車に乗せられて、ハンカチで口を覆われた。
次に気がついたときには、

すでに見知らぬ建物の中に監禁されていた。

暗く、誰もいない空間。

「うあっ・・・ママぁママぁ・・・」

必死で叫んだ、泣いた。
しかしママは来ない。
かわりにさっきと同じにやりとした笑みでおじさんがやってきた。

「ふふふ。泣いてる顔もかわいいねえ・・・
 そんな顔してるといじめたくなるねえ。」

―――バチンっ

思い切り頬を殴られた。

怖い。そんな感情しかなかった。


誰か誰か誰か誰か。
はやく  助けて下さい。

そのときだ。彼が現れたのは、


バリーンと大きなガラスが割れる音がした。
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