赤ずきん〜もう一つのおとぎ話〜












俺はどうしてしまったんだろう?








「…ねぇ?狼さん。




あなたの手は


足は体は、


どうしてそんなに
大きいの?」









…………ああ…そうか。






「………それはね、赤ずきん」






君があまりに無邪気で




…君があまりに純粋で






「…この大きな長い足は
お前を追いかけるために…」





君があまりにまっすぐで



…あまりに美しいから。





「…この大きな手はお前を捕まえて押さえ込むために…



この大きな体はお前を
食べるためだけに…」







俺はおかしくなったんだ。




「この目も…声も顔も


指先や肌さえも全て






…全てはお前を食べるために」









…君に触れちゃいけないと思った。



これ以上君に
近づいちゃいけないと





…そう思った。






きっと俺は怖かったんだ。








今まで味わったことのない
甘くて温かい優しいなにか。




急激に変わる自分の気持ち。




気付くのが怖くて。








いっそのこと君が






血相変えて逃げ出してくれればいいと思った。







軽蔑の眼差しで




…汚らわしいものを
見る眼差しで。





俺はきっと



君から離れる勇気がないから。







君から離れて行ってくれたら。







…それが今の俺に出来る










精一杯のさよならのはずだったのに。









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