【完】アイドル彼氏★好きになっちゃった
……いたっ!


帽子をかぶった男の子は、今もまだうつむいたまま、ベンチに浅く腰をかけていた。


目の前まで走って、立ち止まった。


「翼っ!?」


思いきって、勢いよく帽子を剥いだ。


すると……


そこにいたのは。


「……え」


私を見上げ、挙動不審に目をパチクリしてる男の子。


違う……、違った。


こんなとこに、翼がいるわけない。


なのに、私は何を期待してたの?


「うっ……」


「……うわ、なんで泣いてんの!?」


「ごめんなさい……人、間違いしました」


慌てる男の子を残して、ホームにあるトイレへと駆け込んだ。


私……何やってるんだろう。


自分の会いたいときに会えないからとか、


自分だけの翼じゃないから苦しいからとか……。


そんな理由をつけて、自分で翼から離れたくせに。



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