ふいうち
「おーい、寝るなよ」
「眠くないんだもん」
「だもん、て目閉じてんじゃねえか!こら!」
母親同士が高校の同級生で、2人とも地元で結婚したこともあって、生まれたときからよく一緒に過ごした、
だから、いい意味で言えば、気心知れた仲っていうか、まあ腐れ縁?
「奈々緒! 」
そう言ったが最後、奈々緒は派手に首をかくっとさせると、眠りの世界に落ちていった。
「またかよー、、、」
酒弱いくせにここまで飲んで、人んちで爆睡かますなんか、こいつくらいのもんだ。
俺は、気持ち良さそうな寝顔にため息をつき、おでこを軽くはたいてやった。
「ん、」
少し顔を歪めたけど、起きる気配のまったくない奈々緒を担いで、ベッドまで運んだ。
奈々緒に譲った寝室を静かにあとにして、ソファーに寝転んだ。
小さい頃の奈々緒は、泣き虫で寂しがりやの甘えたやつだった。
だから、同い年ではあったけど、いつも俺が兄貴役をしていた。
何をするにも俺の後を着いてくる奈々緒を、ときには年上のやつらから庇ったり、けがをしたときにはおぶってやったり、尽くしっぱなしだった。
そのせいか中学生ともなると、生意気なお嬢様になってしまった。
そのくせ、恋をしやすい奈々緒は、彼氏にわがままが言えなくて別れてしまうと、そのたびに「あんたが甘やかすからだ!」とかなんとかいって、文句を言っては俺に八つ当たり。