ふいうち


奈々緒自身の惚れやすい性格に加えて、俺が言うのもなんだけど、奈々緒は小柄で色白で人より少し可愛いのだ。

だから小さい頃からモテた。

同じ学校に通っていた中学までは、兄貴役の俺としては変な男に捕まるのだけは阻止したかったから、いろいろと気を揉んだりした。

まあおかげで、シスコん野郎とか言われてたけど。

お互い別の高校に通い始めると、当然今までのようにはいかないわけで、フラれては泣きつかれる、といった今のパターンがすでにできあがっていた。




そんなある高2の夏の日、尋常じゃなく思い詰めた奈々緒が俺のところにやってきたことがあった。





「のり、もう、やだ・・・」





泣き腫らした目で力尽きたように座りこんだ奈々緒の姿は、今でも忘れられない。





「ちょ、何された?」




とっさに肩を掴むと、青ざめた奈々緒が
小さな声でこう言った。




「 、子どもができた、って」





また目に涙を浮かべる奈々緒と、発せられた言葉に、俺の中の怒りは一気に最高潮。



当時付き合ってたやつは、俺も知ってる中学のときの連れだった。

告白されたって聞いたとき、あいつなら大丈夫だって、俺も安心して奈々緒を任せられた。



それなのに、子どもができただと?



そのときの俺の取り乱しようは、ひどかっただろう。


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