ふいうち
やつの部屋を出たところで目が覚めた。
昔のことを夢に見るなんて、めったになかった。
もちろん、あんな話を今になって夢に見たことがなかった。
目が覚めてみると、全身に変な汗かきまくりで、気分も悪かった。
とりあえずシャワーを浴びることにして、熱いお湯を頭からかぶる。
どうして今さらあんな夢を見たのか。
正直あのころはまだ子供で、一方的すぎたとは思っている。
だけど、悪いことをしたなんて思ったことはない。
今になって思うこととして、奈々緒はもちろん、まだ安定期にすら入っていないだろう小さいガキおかまいなしで、SEXなんかしていたあたり、命の重さが分かっていたとは思えないから。
むしゃくしゃする気持ちを熱いお湯で洗い流してから部屋へ。
「なに自分だけシャワー浴びてんのよ?」
キッチンからなべつかみが飛んできた。
我が物顔でフライパンを握っている奈々緒のしわざだ。
あのことがあってから、奈々緒は一時期ふさぎこんでいたことがあった。
それだけに、今またこうやって元気に彼氏にフラれたー!とか言って笑えるようになって、本当によかった。
「何よ、気持ち悪い、ニヤニヤしないでよ!」
それともう一つ、あれから俺のなかに明らかな変化があった。
奈々緒のことがたまらなく好きだということ。