ふいうち



「なに?俺のぶんも朝飯つくってくれてんの?」





幼なじみだという関係から抜け出したくない俺は、今までこの想いを隠してきた。

奈々緒のことを忘れようとしたこともあった。

それに、恋人だっていた。





でも、やっぱり俺が本気で欲しいのは、奈々緒自身でしかなくて、ずっと葛藤を繰り返している。





奈々緒は今でこそフラれたって引きずることはないけど、ほんとはまだ怖くて踏み込むことができないでいることも知っているし、潰れるまで酒を飲むのが強がりだっていうことも知っている。





だからこうして奈々緒が俺を頼ってくれることが嬉しい、けどもうそれだけじゃ物足りない。

奈々緒の心が欲しい。















「これ食ったら帰る?」

「ああ、うん、帰ろっかなあ、」






奈々緒お手製の味噌汁と飯を二人で食いながら他愛もない話をする。





「帰る、けどさあ、」





箸の先をくわえて、ねだるような目をした奈々緒。





こんな顔を無意識にやってるなんて、俺以外の男なら、完全に犯してるね。





「わーかってるよ、送りゃいいんだろ?」

「やった!大好きのりくん!」





全く、これだから可愛いんだよ。


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