ラブ・シンドローム
「まあ、太一はがさつだし、全然男らしくないもんね」
誰と比べて、というのは言わなくてもわかる。
大人っぽい梨乃が好きになった、9歳も年上の担任は、教卓の前でヘラヘラと気の抜けた笑顔を浮かべている。
その左手薬指には、皮肉にもキラキラと輝く金色の指輪がはめられていた。
「でもね、緋色。後悔だけはしないようにね。あたしは、次はみんなに自慢できるようなかっこいい彼氏見つけるんだ」
明るく言った、梨乃の言葉が胸に刺さる。
後悔か、と呟いてグラウンドに目をやる。
ここは窓際いちばん後ろの席。
席替えのくじ運は、我ながら最強だと思う。