さくらんぼロリーポップ

「……龍だったらわかるのかよ」


「えっ……」


鞄を握る藍楽の腕を豹が掴んで引き留める。


振り返った藍楽は、


「おまえの気持ち。俺にはわからないのに龍ならわかるのかよっ」


目に入った苦しげな豹の顔に既視感を覚えた。


記憶を手繰り寄せた先でリンクするのは、初めて絵那と豹のやり取りを目の当たりにした時。


絵那を好きなのかと勘違いした自分に怒った豹が、思わず零してしまった言葉と表情が蘇る。


“どいつもこいつも……そんなに龍がイイのかよ!”


あの時は絵那に向けられていたと思った言葉は、


「豹先輩もしかして……龍先輩に嫉妬してるんですか?」


どうやら龍に向いているのではないか……。


そう核心した藍楽がそれを口にすれば、


「……やっぱりおまえムカつくよ」


「っ!!」


掴まれた手を力任せに引かれ、重心が豹の方へと傾けられてしまう。


そして勢いのまま豹の顔が寄せられた藍楽の肩口に近付いた瞬間、


「イタッ!」


ビリッとした痛みがにわかに走り、思わず声をあげてしまった。


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