さくらんぼロリーポップ

豹が纏う空気がピリピリとしたモノへと変わっていく。


まずい……怒らせた。


頭の中ではわかってるのに、素直に謝る気にはなれなかった。


不安そうに豹と藍楽の気まずい空気を窺う椎菜と修護に、


「あっ! 藍楽!」


心の中で詫びながら藍楽は全速力で教室から飛び出していた。


とにかくあの場に居たくない。


その一心で駆け出した藍楽を、


「あっ、丁度イイ所に」


いつもの間延びした笑顔を浮かべた龍が呼び止めた。


「資料のコピーをしようと思ったのに生徒会室に誰も居なくてさ」


藍楽の複雑な心境もどこ吹く風。


片手に持っていた資料の原本をかざしながら、プリプリと唇を尖らせている。


そんなマイペースな龍を見ていると、さっきまで感じていた複雑な気分があっさりと削がれてしまう。


「だから高原さんに会えて助かったよ」


ヘラヘラッといつもの無添加の笑顔で言われ、何だか気持ちがトクンと高鳴る。


助かった。


誰かに必要とされ、役に立てることがやっぱり嬉しいと感じてしまう。


龍を守ると豪語したことを後悔してた気持ちは、龍の一言ですっかり消えてしまっていた。


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