さくらんぼロリーポップ

「顧問が他の資料も取りに来いって」


「わかった~。職員室行ってくるよ」


頭が真っ白になって動けない藍楽の傍らで、豹が龍に顧問からの伝言を告げている。


それを聞いた龍が印刷室を後にした瞬間、


「……お前が見張るのは俺だって言ったよな」


「っ!!」


荒っぽく手首を掴まれ、力任せに豹の方へと引き寄せられてしまう。


驚きと一抹の恐怖で声が出なかった。


「そんなに俺に噛まれたいんだ?」


ニヤリと不敵に笑った豹がジワジワと藍楽の方へと顔を寄せていく。


昨日のビリッとした痛みと羞恥心が藍楽の中にフラッシュバックする。


「い、いやっ!!」


「っ……」


その瞬間、思わず豹から大きく顔を逸らしていた。


喉の奥から搾り出した声と二回目の拒絶。


慌てて顔を上げた先では、


「ぁっ……」


昨日見た苦しげな表情とは違い、切なく哀しいげな顔をした豹が藍楽を見つめていた。


その表情に藍楽の胸の奥がギュッと締めつけられるように痛む。


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