さくらんぼロリーポップ
来るときは小降りだった雨は、少し雨足が強くなっていた。
約束の時間からとっくに一時間以上経っている。
もしかしたら、もう豹はそこに居ないかもしれない。
それでも藍楽の足は止まらなかった。
龍から真実を聞いた今。
藍楽の中で豹に感じていた感情は綺麗に取り払われていた。
あんなにムカついたり、怖がったり拒絶したりしていたのに……。
我ながら現金な奴だなって思って、少し自嘲した。
でも、豹の本当の心が見えそうな今なら……自分が求めていた言葉が聞けるかもしれない。
制服が濡れるのも気にせず走り続けた先で見付けたモノに目を奪われた。
雨で閑散とした駅前のベンチ。
そこには降りしきる雨に濡れそぼった豹の姿があった。
いざ豹を目の前にすると、頭の中に浮かんでいた様々な言葉が弾けるように消えてしまった。
豹にかける第一声が浮かばないまま、藍楽は走っていた足を緩めて一歩一歩近付いていく。
そうして俯いてベンチに座る豹の上に傘を差し出した。