さくらんぼロリーポップ

体に当たる雨粒が遮られると同時に。

ずっと降り続く雨が地面を濡らしていくのを見つめていた豹の視界に、ぐちゃぐちゃに濡れた革靴が飛び込んでくる。


履いていた紺色のハイソックスまでがびしょ濡れで、ここまで脇目も降らずに走ってきたことを物語っていた。


雨で役に立たなくなった眼鏡は外していたけど、顔を見なくてもそれが誰なのかはわかる。


裾の濡れた制服姿。
それが豹にとっての答えだと察した。


そのまま顔も上げず、


「……やっぱり龍を選んだんだな」


発した第一声は思っていたよりもずっと小さかった。


ここに藍楽が来るかは豹にとって一か八かの賭けだった。


散々傷付けて挙げ句拒絶されて脅した相手だ。


嫌われても仕方ない。


なのに諦め切れずここで待ち続けたのは……未練。


もしここに藍楽が来たら、自分の気持ちを洗いざらい話そうと思っていた。


何故自分が龍に嫉妬していたのかを……。


< 117 / 125 >

この作品をシェア

pagetop