さくらんぼロリーポップ
「高原さーん」
「あっ」
「良かった会えて!」
「高梨先輩」
食べかけのお弁当箱を提げた藍楽が3年の教室の前を通り抜けた時だった。
来た道とは反対側からブンブンと手を振り返りながら、こちらに駆け寄ってくる龍の姿が飛び込んできた。
その顔を見てすぐに浮かんだのは委員会のことだった。
昨日の今日で図らずも龍が望んだ生徒会入りが決まったのだ。
懇願というか脅迫まがいな勧誘をしていた龍としては喜ばしい限りだろう。
役立たずのお役御免で生徒会入りすることとなった藍楽としては複雑な心情だ。
……なんて藍楽の予想は、
「はい! あげる」
「……はい?」
「今日の1、2限目で作ったんだ。昨日お菓子貰ったからお礼」
いとも簡単に外された。
面食らったようにポカンと龍を見上げる藍楽に、龍はただニコニコとクッキーを差し出すだけ。
生徒会のせの字も言う素振りはない。