さくらんぼロリーポップ
中庭の昨日と全く同じ場所に連れ立って来た龍と藍楽。
腰を下ろすなり龍が持っていたクッキーの袋を藍楽へと突き出した。
勢いのままに袋に手を突っ込み、藍楽はクッキーの一つを取り出す。
「どう? どう?」
「まだ食べてませんって……」
その一挙手一投足をじっと見つめる龍が居心地悪い。
早く早くと催促する龍の視線に根負けして、呆れた顔で手の中のクッキーを口へと放り込んだ。
サクサクの食感とチョコレートの甘さが口の中に広がる、ごくごく普通な手作りクッキーの味だった。
「美味しいですよ」
「ホント? 良かった~。修護なんか、至極普通な味ですって言うんだよ」
その通りだ……とは思っていても言えないが、それをアッサリと本人に告げてしまうところが修護らしい。
修護が神経質そうに眼鏡を直す仕種が浮かんで、藍楽は思わず小さく笑いながらもう一枚クッキーを手に取った。