さくらんぼロリーポップ
一人きりになった教室の中で藍楽はやや放心気味に黒板を見つめていた。
ついさっき生徒会が無いなら仕方ないと、修護に連れられて椎菜が帰っていったことすら曖昧。
今は豹の意味深な行動だけが頭の中を埋め尽くしていた。
“生徒会室で待ってる”
書類に生徒会の印を捺して貰うだけ。
わかってるのに、言われたフレーズと口元に当てた人差し指にさっきから胸のドキドキが止まらない。
何故わざわざ生徒会が休みの日に自分を呼び出すのか。
豹も自分のことを気に入ってくれて……。
なんて、都合のイイことを思っては慌ててそれを打ち消す。
さっきからこれの繰り返しばかりだ。
「さっさと帰れよ~」
廊下の遠くの方から聞こえる教師の間延びした声で我に返った。
ずっとこうしているワケにもいかない。
とにかく行ってみようと、意を決したように藍楽はカバンと書類を抱えて教室を後にした。