Infinite Information
教室に戻ると綾瀬先生がクラスの皆に連絡事項を話していた。
伊藤と辻本、ナナミは学校に来ていた。
山本は席に座っていた。
僕は先生を見ないようにして席に座った。


連絡事項を終えたらしく、綾瀬先生が僕の名前を呼んだ。
僕は「はい」と答えると、「今日の掃除当番は神山君一人にお願いするわ」と言った。
クラスの何人かが喜んでいるが、僕は喜ばない。
山本の名前が呼ばれなかったことが不思議に思った。
昼休みに、辻本に朝の山本のことを聞いたが来た時には机で寝ていたそうだ。
たぶん、山本は能力を使っていたのだろう。




―――放課後
クラスの皆は教室から消えた。
僕だけが教室に残った。
僕は一人箒を持ち、掃除をする。
大体掃除が終わり、あとは机を並べるところで一休みした。


僕は校庭を見た。
ちょうど陸上部が走っている。
良く見ると中に山本がいた。
僕は初めて山本が走っている姿を見た。
誰よりも早く、走る姿が眩しかった。
そのとき、「ミコト」と名前を呼ばれた。
僕はすぐに後ろを振り返る。
伊藤だった。


「よう、おつかれさん。
一緒に帰ろうぜ。
ずっと待ってたんだぜ」


手伝ってくれてもいいのに………


「ありがとう。
もう少しで終わるから」


僕は机を並べ始めた。
昼休みも休み時間もいつも通りの伊藤だった。
昨日のことが嘘のように思えるほどだ。
伊藤はさっき僕が校庭を見ていた位置から校庭を眺めていた。
何を考えているのだろうと思いながら机を運ぶ。


「なあ、昨日のことなんだけど」


伊藤が僕に話しかけた。


「俺と一緒にやらないか」


突然の御誘いだ。
僕は運び途中の机を置いた。
そして、伊藤の方を見る。
伊藤のことは子供のころから知っている。
伊藤の目が真剣かどうかなんて目を見ればわかる。
僕は正直に答えた。


「やらない」


伊藤は笑みを浮かべた。
たぶん僕の答えを知って尋ねたんだ。
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