Infinite Information
―――帰宅途中
僕は相談相手がほしかった。
気がつくと帰り道、森下病院に寄っていた。
森下病院に着いて受付をするとすぐに名前が呼ばれた。
今日は他の患者が少なかった。
僕はドアを開け、部屋に入った。


「やあ、元気だったかい」


毎度のことだが、森下先生は元気な医者だと思う。


「はい、先生こそ御元気で」

「まあまあ、緊張せずにリラックスして」

「リラックスしてます」

「そうだね………よし。
最近はどうだい。
変った事とかあったかい」

「はい、ちょっと相談したいことがあります」


森下先生の顔が変わった。
急に真面目になった。


「そうか、やっと能力を使う気になってくれたか。
いいかい。
君の能力は………」

「能力のことではありません」


先生はガッカリしたのか僕から机の書類に目を向けた。
僕は森下先生のことを気にせずに話した。


「森下先生は『人としての価値を象徴するのが『才能』という世界をどう思いますか」


森下先生は僕の方を見た。
僕は驚いた。
この十数年間で先生が初めて本当の医者のように見えた。


「それは一言では言えないことだよ。
ある人は素晴らしいものだというが、他の人はそうではないという。
しかし、君が言った『人としての価値を象徴するのが『才能』のように世界は動いている」

「僕が聞きたいのはほかの人の意見じゃなく、森下先生の意見です」

「私は今の世界が素晴らしいと考えている」

「どうしてですか」

「今生きていることを幸せに思うからだ」


僕はそれ以上質問することができなかった。
その後は森下先生に借りている腕時計を見せて病院を出る。




―――帰り道
僕は空を眺めながら徒歩で帰宅した。
夕焼けがきれいだった。
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