Infinite Information
「―――というわけです」


綾瀬先生の話が終わると同時に予鈴がなった。
やっと三限目の授業が終わった。
僕は急いで帰る支度をした。


「帰宅するには早いんじゃない」


隣の席にいる辻本アカネが話しかけて来た。


「今日、体調が悪いから………」


辻本は僕の方を見て笑みを浮かべた。


「アンタ、いつも体調悪いじゃない」

「………」


確かに早退する度に同じ言い訳していた。


「ミコト、次は能力検査だぞ」


伊藤が僕達の話に入ってきた。


「この前のミコトの能力値が11でも、今日は上がっているかもしれないぞ」

「いい………」


僕は伊藤の説得を拒んだ。


「ミコトも早く『才能』に目覚めればいいのにな」


伊藤は僕を見ていた。
伊藤から見れば、僕はどう見えるのだろう。


「………」


僕は何も言わずに教室から出た。
教室を出ると、廊下の窓が反射して教室が薄らと見えた。
伊藤と辻本は僕に手を振っていた。
僕は窓を見ないように教室を出た。
廊下には『才能』で空を飛ぶ人や水を操る人がいた。
こんな光景は日常茶飯事だ。
僕はなるべく見ないようにして下駄箱まで走った。




僕は学校を出て停留所でバスを待った。
帰宅する前に病院に行かないといけない。
どこも悪くはないが子供の頃の事故以来、週一で通っている。
診察料金は無料だから続けている。


バスが来た。
僕は乗車して料金(210円)を支払った。
座席は一つ空いていた。

僕はその付近の手すりを掴んだ。
空いている席を眺めるだけで座らない。
次の停留所で御爺さんが乗り込んできた。

御爺さんは僕が眺めていた席に座った。
別に親切心があるわけではない。
それに優越感がほしいわけじゃない。
面倒事に巻き込まれたくないだけだ。

しばらくして………


『森下総合病院前、御降りの際は、御足もとにご注意してください』


バスのアナウンスが鳴り、僕は停車ボタンを押した。
ランプが光った。
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