Infinite Information
僕は椿十郎を見た。
森下先生ではない。
何を言っているんだ。


「森下………先生」

「そうだよ、私だよ。
神山君が知っている森下総合病院の森下だ」

「これはどういうことですか」

「………」

「ここに僕と同じ年の男が来たと思うんですが知りませんか」

「知っているよ」

「伊藤は今どこにいますか」

「そこにある扉の向こうに君の友達はいるよ。
だが、焦る必要はない。
私と話をしてくれたら彼を返そう」

「話って何ですか」

「神山君、私は『R』のボスだ」

「………」

「そして、『W』の幹部でもある」

「何を言っているんですか。
そもそもなんで森下先生が椿十郎なんですか」

「これは私の『憑依』能力だ。
この者の身体を借りて『R』のボスをやらせてもらった」

「なんでこんなことを………」

「一つは世界を変えるためだ」

「先生は僕が『『人としての価値を象徴するのが『才能』』という世界をどう思う』か質問した時に『今の世界が素晴らしい』と答えたじゃないですか。
それなのになんで………」

「あれは嘘だ。
この世界は素晴らしいとは思わない」

「………」

「私の生きてきた68年の人生で一度もこの世界が素晴らしいなんて思ったことがないんだ」


僕は今の状況の整理する時間が必要だ。
森下先生の能力が『憑依』で椿十郎の身体を借りて『R』のボスをやっていた。
そして、『W』の幹部でもあった。
でも、なんで僕が見えたんだ………

「先生、なんで僕が部屋にいるってわかったんですか」

「簡単なことだ。扉が勝手に開くわけないだろ」


言われてみればそうだ………


「それに神山君がここに来ることは予想がついていたね」

「どうしてですか」

「これは神山君のために起こした犯行なんだ」
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