たった一つの流れ星
いつも走り慣れているコースを走る。夜の闇と雨のせいでコンディションは最悪だったが、このコースは目を瞑ってでも走れる程自信があった。
走っている内に佑二は驚くほど落ち着いてきた。仕事のミスは完全に自分の不注意だ。佑二はここまでエリートそのままの人生を歩いてきた。外資系の仕事で海外に行ってばかりの父と、学校の教師だった母。幼い頃は英才教育を受け、期待と重圧を背負いながら育ってきた。
ただやはり佑二も子供で、いつも仕事で家を留守にしがちな両親に寂しさを感じていた。そのこともあってか自分が親になった時、妻には絶対家にいてほしい。という願いがあった。今回亜紀と結婚を決めたのも、亜紀が仕事を辞めると言ってくれたのも大きかった。
亜紀…。自分でも分かっていた。八つ当たりだ。亜紀をホントにくだらないことで泣かせてしまった。亜紀は絶対幸せにするって決めたのに。
佑二は自分の中で汚れた部分がバイクの向かい風に煽られて、少しずつ自分から削ぎ落ちている気がした。
亜紀に謝ろう。そして仕事のミスも受け入れよう。


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