たった一つの流れ星
「ただいま~」
数日後佑二が帰ってくると、亜紀がカレンダーを捲りながら彼を迎えた。
「また見てるのか?」佑二が呆れ顔で聞く。来月、10月18日に大きく何重にも丸がついていた。結婚式の日だ。
「ついに後1ヶ月切ったよ!」
亜紀が興奮気味で答える。
「そんなカレンダーばっかり見てたってちゃんとその日は来るんだから、大丈夫だぞ」
佑二は呆れ顔のままソファに座る。
「だってなんか緊張するんだもん…。あ、永井さんから連絡あってね、式までに2人で一回来てくださいって!」
永井さんとは2人の式のプランナーだ。式に対して亜紀が予想以上にこだわるから、永井さんにも大分迷惑をかけてしまった。
「ごめん。オレ、今度の日曜は無理なんだ。急な仕事が入っちゃってさ」
式前に佑二には大事な取引のプレゼンが一個控えている。ミスさえしなければ、ほぼ失敗の心配は無いが、式前にしっかり終わらしておきたい。
「…そっか、分かった。永井さんに次の週末で伝えとく。その日は大丈夫だよね?」
亜紀ががっかりした感じで聞いてくる。
「うん、多分大丈夫だと思う」
「良かった~!じゃその日で!」
亜紀に笑顔が灯る。亜紀の笑顔を見た瞬間に佑二の疲れは吹っ飛んだ。亜紀の笑顔が大好きだ。保育士という職業からか、亜紀は笑顔がとても素敵だった。佑二もそこに惚れた。亜紀の笑顔を見るたびに佑二には力がみなぎってくる気がするのであった。
< 5 / 25 >

この作品をシェア

pagetop