~ ☆プレーチェ★ ~


 ミルクの入ったピッチャーを用意して、カプチーノにミルクを注いで【絵を描くんだ】。
 
 その絵はなんだっていい。
 
 クマ、サル、鳥、犬……。

 なんでもありさ。


 物心付いた時から母さんは【バリスタ】として働いている喫茶店の店長で忙しく。
様々なカフェメニューに合わせた料理も店に来る客から好評を受けている。

 母さんに頼まれて俺もよく店の手伝いをしていたから、この【カフェに絵を描くラテアート】がいつの間にか得意の分野になっていた。

 だから母さんや客達は俺の【ラテアート】を見ると褒めてくるけど、それは好きで覚えたことでもないから褒められても嬉しくなかった。


 でも、今は……。

 今は……玲亜のためになら……。

 なんていうか…作る意味ができたから!

 【ラテアート】をもっといろいろ作りたいっていう目標もできたんだ…!


 ……こいつのおかげだ。

 そんなこいつのために、今カプチーノに描いて仕上げたのは、笑っている三毛猫。


 カチャッ、コトッ


 今回もうまく書き上げると、少し息を吐いてピッチャーを置いた。


 それから、カップの乗った皿を持って、玲亜がいるテーブルまで持って行く。


 カチャッ


『ほらっ』


 そっと玲亜の手元に置いてやると、玲亜も凄く嬉しそうに笑って、


『ありがとう』


 と、礼を言ってくれた。


 それがまた嬉しかったけど、顔に出ないようにしながら〝ああ〟と頷いてまたカウンターに戻った。

 ついでにこの前作ったケーキも出してやろうと思って、冷蔵庫からホールのケーキを出して切る。
 


『聖の描いてくれるこのラテアートって、まるで心を癒してくれる魔法のカップみたいよね』
 


 笑顔の三毛猫のアートを浮かべたマグカップを両手で包みながらいきなりそう呟いた玲亜に、俺はケーキを用意する手を止めて顔を上げた。

 眼を細めると、俺のショートヘアの黒髪が垂れ下がってきた。


『……何言ってんだ?』

『本気で言ってんのよ、私』


 バカにした口調が分かったのか、顔を顰めて聞く俺に玲亜は気にせずに、大きな茶色い瞳でニッコリと微笑みながら続きて言った。

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