~ ☆プレーチェ★ ~



 ずっと避けてきた、聞きたくもない言葉。

 ……それを、ここで、こんなガキの考えた理由で使うなんて絶対にごめんだ!

 受け入れてやるもんか!


 それだけ強い意思を込めて、意思を伝えたはずなのに

 ガキは俺をジッと見るだけみて、それから静かに両眼を閉じた。



〝……ヤダ〟

「なっ……!」



 表に出せばそっぽを向いて言いそうな口調の返事に

 思わず心の中ではなく声に出して〝なんでだよ!〟と怒鳴りそうになった。


 ただ、


「どうしたの?」


 と、母さんが心配そうに聞いてくるから、その先の言葉は言えず

 飲み込む形となって更に掌を握る力を強めた。


 母さんから見ればずっと黙って見つめ合ってるようにしか見えない俺達の様子が不自然なんだろう。


 だから俺は、

「なんでもない」

 と、一応答えておき、ガキの方をもう一度見た。

 ガキはちょうど大きな両眼をまた開いてこっちを見ていた。


 翡翠色の瞳とバッチリあって……。


〝くだらなくなんかない〟


「………っ!」


 流れてくる言葉とその眼から表れる感情が

 さっきまでニコニコしていたふざけた雰囲気とまったく違ってて。


 どこか真っ直で強い視線にグッと押され、また言葉が出なかった……。

 なんで……こんなガキに押されてるんだと思うけど……。

 それだけ、ガキが言葉を消す気がまったくないことを無言で言ってきてる……。

 それだけ……ガキにはガキなりの深い意味があると……。
 
 そう感じるだけの圧力が無言の中に含まれてて、何も言い返せなくて……
 俺の方から視線を外してしまった。


「えっと~……」

 こんな無言の続く中、母さんは困ったように俺達を交互に見て、何を思ったのか、

「と、とにかく!月菜ちゃんがあなたを好きだって思ってることは確かで

だから今朝もあなたのことを起こしに行きたいとか言ってのねって思ったのv 

こうして2人きりになれば、なんでもできるものねvvv」


 と、この場の空気も関係なく笑い、チラッと俺を見た。


「それじゃあそろそろ邪魔者は退散するわね~」

「邪魔者ってな……」

「月菜ちゃん、ごゆっくり~♪」

「はい、ありがとうございます♪」

「って、何でそんな返事になるんだよ!!」

 思いっきり俺達が好き合ってるみたいなの会話をして!

 俺は言い返せはしてなくても、ガキのやり方を認めてないんだ!

 納得いくか!!




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