~ ☆プレーチェ★ ~


 外に出て息を吐けば白いモヤが出てくるほど寒い。

 もう昼だから太陽が真上まで上がっている。

 街の人も何人か歩いているから、半分溶けて泥まみれな雪の上には足跡がたくさんだ。

 ガチャリと裏口の鍵を閉める。


 そのままコートのポケットに両手を突っ込んで足跡のある雪道の上を歩く。


 どこに行くかは決めていない。


 ただ、店にも家にもいたくないだけだ。


 店にいれば…家にいれば思い出してしまうから。
 
 あいつと一緒にいた、たくさんの日を……。

 でも今……あいつはいない。

 あいつがいない場所に、なんで俺はいるんだ? 



 なんで……。 


 ………。



 俺はそんなことを考えながら、下を向いて歩き、一人で夜まで外にいる時間を過ごした。



 ――――――――――
 
 ―――――――
 
 ―――― 



“うー寒い!! やっぱり冬の夜はかなり冷えるな~~……!!”


 ハァッと手に息をかけ擦り暖めながらそんなことを考える。

 道中、誰も歩いていない夜中の道路を歩いて家へと向かっていた。


 今の時刻は23時半。

 すっかり夜中でほとんどの店が閉まっている。


 うちの喫茶店はいつも21時が閉店で、もうとっくに閉まってるだろう。

 母さんも店の片付けをし終わって、自宅の方で風呂とかに入り込んで休んでるんだ。


 今日は外に出てから一日中図書館に行って本を読んでいたなぁ。

 あそこはいつも暖房が効いてて暖かいから、家にいたくなくて寒い外を避けたい場合に丁度いいんだ。

 腹が減ったら近くのコンビニでメロンパンとコーヒーを買ってすませるし。

 すぐも度ってまた図書館に籠れる。


 まぁ、何時間と図書館の中にいるだけだったという気もするな。

 何十冊と本を開いていても、俺は本当に本を読んでいなかったんだ。


 本を開くだけで、ずっと長い時間読まず、頭の中は常に……あのことばかり考えていた。

 忘れられないあの日のことばかり……。

 
“あの日、あんなことがなければ……”


 過去の後悔を何度も何度も頭に回転させて。

 今も悔いばかり頭に浮かばして、もう人影のない道を歩いていた。

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