白いベンチ



『咲ちゃんってゆーんだ。』



図書館で借りた本を読む私の視線は男の視線とぶつかった。


「なんで?私の名前…」


見ず知らずのこの男になぜ名前を知られていたのか、不安と緊張が巡った。



男は優しく微笑むと鞄を指した。

『図書館のカード落ちそうだよ?咲ちゃん?』

無造作に鞄に入れたカードは取り出した本と一緒に顔を出していた。




< 10 / 55 >

この作品をシェア

pagetop