White Witch
本に埋もれたせいで全身埃まみれ。ニクスは何も考えずに小さい子にするようにポンポンと掃ってやる。
「気をつけろよ。」
ミランダの身長に合わせるように屈みポンと頭を撫でられた。
また子供扱いされてしまった…
でも、小さいころお祖母さまによくしてもらってたな。
撫でてもらった頭を自分の手で抑え、昔を懐かしんでいた。
二人で捜索した結果、灯台下暗しとはよく言ったもので二人が探していた場所ではなく普通に食卓の上に数冊の本にまみれて置かれていたのだ。
これには二人とも脱力…あんなに探したのにこんな目に付く場所にあるなんて…
本には
『黒死病』発病から死に至るまで、数週間。
全身の皮膚が黒ずみ衰弱していく。
感染しやすく、患者の体液には触れない。
治療薬は毒処理された『カイソウ』と『万年草』を1:2で調合し、1日に数回服用。
また、衛生面によく注意し患者は完全隔離で治療。
他にもいろいろと書かれていたが、大まかにはこんなところ。
『カイソウ』と『万年草』か…
ミランダが考えていると。
「で、どうなんだ。薬は作れそうか?」
「それは大丈夫なんだすけど…ただ、薬の材料に少し問題がありまして…『カイソウ』はここにしか生息していなくて、毒処理にも時間がかかるんです。」
「そうなのか…しかし、なるべく早く薬を王都に届けたいんだ。どうにかならないか?」
二クスが懇願してくる。
方法もないわけではなんだけど…それだと、私がこの森から出ないといけなくなる…
「その、私が王都に行くまでにカイソウの毒処理をすれば王都に着く頃には薬が調合できるかと・・・」
「それなら問題ないじゃないか!!すぐに出発しよう。ミランダ、荷物をまとめるんだ必要最低限で。」
二クスはささっと支度を始めた。
そんな強引な二クスにたじたじ。
「あの、私…森から出てはいけないんです。」
ミランダがやっと言葉をかけると。
作業をしていた手を止め、ミランダを見る。
「だから、私はこの森から出ちゃいけないんです。出たら…みんなが不幸になるって」