ある日の暇つぶし
未定
私は人を殺した。


相手は知り合いでもないし、計画性があったわけでもない。


つまり、理由なんかなかったのだ。

いや、あったのかも知れない。

しかし人を殺してしまえば、理由なんかは関係なくなる。

それは人を殺して見ればわかる。





ある夜、私は一人でファミリーレストランに入った。


その夜は私がやっていたバンドのライヴの帰りだった。

しかも俗に言うヴィジュアル系と呼ばれるバンドだ。

もともとは普通の爽やかなバンドだったのだが、何故かこうなってしまっていた。

もう30近い私も、ライヴばかりは髪を染め、柄にもない「若者風」になる。
いや、「若者風」を飛び越しているだろう。

ヴィジュアル系バンドと言えば、想像するのは容易い。


まぁともかく、あの夜、私は金髪に些細なメイクに大きな楽器ケースをぶら下げた状態だった。


しかし、そんな事は対して関係ない。


10分か20分か待ち、私は二人用の喫煙席に案内された。

隣りの4人用の席には女子大生と思われる二人組が座っていた。


私にはどうでも良い事だったが、二人組にはそうでもなかったらしい。

髪の黒い方にしげしげと眺められた。

私はそれに不快感を覚えつつも、うやうやしく水を運んでくる店員に軽く会釈し、メニューを広げ始めた。


メニューを選ぶ労力すらおしい。

私は店員が行ってしまう前に、一番最初のページに一番大きく掲載されているハンバーグを注文した。

あぁしかし、私は肉が嫌いだった。

しかし今はそれ以上にメニューなどに目を配る労力がおしい。

疲れ果てたカラダはとにかく何かを欲していた。

隣りの席の二人組は下世話な話をしていた。

自分の恋人の愚痴を黒髪が早口で口汚なくまくしたて、金髪の女がそれを聞く。

たまに金髪が落ち着いた口調で話すと、また黒髪が口汚なく罵る。


誰しもが不快になるであろう会話に私は耳をたてていた。


それに関して言う事は別にない。

強いて言えば、汚い の一言だろう。

少なくとも、私の知り合いでないし、私に関わってくるわけでもないなら、それは私にとってどうでも良い事だった。
< 1 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop