多重書きの二等辺三角形

『空に星なんてたくさんあるでしょ?』


ひかりさんは遠くを見るようにしてそんな話を始めた。


『何個も、何十個も、何百個も星なんてあるのに…いくらジャンプしたって届かないじゃない。掴めそうに見えても、掴むことなんて出来ないじゃない。夢なんて所詮そういうもんよ。』


『そんなもんかなぁ…。』


純ちゃんはそんなことを言いながらひかりさんの話を聞いていた。


『夢を語るだけなら誰でも出来るからね。』


するとひかりさんは立ち上がって更に熱く語りだした。


『例えば…何の変哲もない普通のジュースでもさぁ、オシャレなグラスに注いで、グラスの淵にレモンでも挿しておけばそれっぽい感じになるでしょ?夢を語るってそういうことだと思うの。本当に美味しいジュースだったら紙コップでも美味しいもの。語るより叶えなきゃ。』


この人は大人だ…。


見かけだけじゃなくて、心まで大人だった。


純ちゃんは、メジャーデビューして武道館をいっぱいにさせるのが夢。


ひかりさんは、パリでモデルの仕事をするのが夢。


なんだかこの場にいるのが恥ずかしくなるくらいだった。


あんたらスゲーよ♪(笑)

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