多重書きの二等辺三角形
拍手の渦の中、俺とひかりは立っていた。
考えてみれば、俺はあの時“人から拍手をもらうことの喜び”を知った気がする。
その光景にひかりは顔を真っ赤にして
『バカじゃない!!』
と走って逃げてしまった。
知ってる。
ひかりがこういう演出が苦手なことくらい知ってるよ。
知っててやったんだ。
どうしても…ひかりが好きな俺自身をみんなに知ってもらいたかったんだ。
それともう1つ。
ひかりは人に弱さとか見せないだろ?
赤くなったり、照れたり…人間らしい部分があることをみんなにも見てもらいたかったんだよ。
…ごめん。
でもそれも西城ひかりの魅力だって思うから。
今のひかりは本当にカワイイよ。
中学3年生の5月…俺に初めての彼女が出来た瞬間だったんだ。