多重書きの二等辺三角形

純平を好きな気持ち。


義理の父親の傲慢さ。


マスターは、悩みの全てを透かしてるように感じた。


『ひかりちゃん。恋は綺麗なものって思ってないかい?』


「えっ?」


『恋はいつだって綺麗とは限らないのだよ。時には汚く、ズルくなったっていいものだ。』


マスターはわかってくれてたんだ。


私の本当の気持ち。


『自分の気持ちに嘘をつくことが1番卑怯な道なのだよ。』


私は泣いた。


初めてだった。


初めて人前で泣いた。


その相手は純平でもユナでも親でもなく…


マスターの前だった。


店内に流れてたBGMの音量が少し上がった。


それがマスターの優しさだったんだ。

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