多重書きの二等辺三角形
するとさっきまで黙ってたマスターが口を開いた。
『何も諦めることはない。君の人生だ。君だけの人生なんだ。“恋”も“夢”も追いかけなさい。何も恥ずかしいことじゃない。真っ直ぐ思った通りに生きていればいいのだよ。』
「マスター本当…?」
『あぁ、本当さ。それからね。純平くんにもっとそういう話をしなさい。彼は本当に優しい男だ。きっと受け止めてくれるはずだよ。』
「そんな姿見せられないよ。」
『男っていうのはね。女の弱さを求めてるものなんだよ。』
「どういう意味?」
『自分にしてあげられることがないと、男は自分の不甲斐なさを考えてしまうものなのだよ。だから“弱さ”だって見せたほうがいいんだ。何も心に隙がなかったら、助け甲斐がないじゃないか。』
マスターの言葉に聞き入っていた。
いつの間に、私の涙もひいていたんだ。
『心にある“隙”が、いずれ“好き”に変わるんだよ。』
やっぱりマスターはスゴイよ。
「マスターって何でも知ってるね!!恋愛界の池上彰みたいな人だよ。(笑)」
『あんなに老けてるかな?ははは。』
気づくと胸の淀みが少し薄くなっていたんだ。