多重書きの二等辺三角形

『俺はなかったことになんて出来ない。もうユナに嘘はつけない。つきたくないんだ。』


「いいの!その先は言わないで…。映画行こ?いいよね?すぐ行こ?」


最後の悪あがきだった。


核心的な一言が聞きたくなかった。


そのための時間稼ぎしか出来なかったんだ…。


(バタッ…。)


すると純ちゃんは立ち上がり、私に頭を下げた。


「ごめんなさい。別れてください。お願いします。」


それだ…。


それが私の聞きたくなかった一言なんだよ。


やめて、やめてよ。


純ちゃんは何度も頭を下げ続けた。


「お願いします。お願いします。お願いします。」


私はショックで声も出なかった。


そんな純ちゃん見たことないよ…。


頭上げてよ。


敬語なんてやめてよ。


そんなのイヤだよ。


絶対イヤ…。


気づくと私をその泣きながらカンピオーネを出ていた。

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