多重書きの二等辺三角形

『ユナ…。人生ってその場その場の断面で見ると悲劇的なこともあるけど、一歩引いて、大きく見てごらんよ。そうすると笑えるお話だったりするんだよ。』


「どういう意味?」


私にはわからなかった。


『人間って誰もが、自分の人生を俯瞰視することを忘れてしまうと思うんだ。悪いことの前にいいことがあったでしょ?それと同じようにきっとまたいいことがあるんだよ。』


そうだ。


悪いこともあれば良いこともある。


と言うか…


良いことばかりだった。


純ちゃんと過ごしていた日々は良いことばかりだったんだ。


いつだって光と影は共存してるんだ。


『大丈夫だよ。こんないい子…。こんないい子…』


恵美は声をつまらせた。


『こんないい子に…神様だって何度もイジワルするはずないもん。もし…そんなことするんだったら私が許さない。』


そう言うと恵美はもう一度強く抱きしめてくれた。


気づくと私の涙が、恵美の肩を濡らしていた。

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