優空 -ユウソラ-



「それで?君は絵、描かないの?」


 照れ隠しにそんな質問をするが、少女は笑ってこう言った。

「榎本 空です」

「は?」

「私の名前、空っていいます。」

「あぁ、そういうことか」

「はい♪気軽に空ちゃんって読んでください♪」


 俺みたいな見知らぬ男にいきなり近づき、自己紹介をしてしまうあたり、彼女は相当な無防備さと純粋さを兼ね備えているらしい。

 今年で二十四になる俺には目を瞑ってしまいたくなるほど眩しい若さだ。

 そこまで考えて、俺は自分の精神年齢の老け具合に自嘲気味の笑みがこぼれる。


「あ、なに笑ってるんですか?私なんかヘンなこと言いました?」

「いや、君…空ちゃんはカワイイなって思ってた」

「…なんか…ばかにしてません?」


 正直子犬、よくても妹みたいにカワイイと言ったので、空ちゃんの疑問は的を射ている。


 普通このくらいの女の子ならカワイイと言われれば喜びそうなものだが…空ちゃんは人なつっこいふうに見えて、なかなかどうして人を見る目はしっかりしてそうだ。



 

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