(禁断)瞳を閉じて。【完】
問診票を書き終えると、5分ほどで呼ばれた。

豊先輩に見守られながら診察室に入ると、「どうぞー」と、優しそうな先生が、椅子に座るように促した。

私は「よろしくお願いします…」と、消え入りそうな声で呟きながら、椅子に腰掛けた。

質問に答えつつ、典人さんとの事を、さりげなく伝えた。



「産みたい?」



「産みますっ」



先生の固い表情に、ドキドキとしながら、力強く言った。



「わかりました。産みましょう!」



先生は私の手を握りながら、笑顔を見せてくれた。

頬の筋肉が、やっと緩んだ私は、分娩台に移された。
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