砂糖水に溶かした日常


ただのお客さんだ。



「お弁当温めますか?」
「お願いします」
抑揚のない、冷めた声。


お札を置いた彼女の指には、吐きダコがあった。長袖から見える手首には包帯がぐるぐると、巻き付けられていた。


だからって、どうすることができるだろう。


「ありがとうございました」

と、俺は彼女の背中を見送る。


< 11 / 35 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop