先生とひよ子
車は山道に入って行った。


未だに酔いは消えず気持ち悪くて無口な私。


だけど先生のくれたカルピスが私を励ましてくれる。


山の中腹辺りで
先生は車を停車させた。


『上まで行かなくてもここからも夜景見えるね。』


先生の声で
私はつむっていた目を開いた。


『あ…すごい』


思わず出た声。


窓の外にはちょうど木々の合間から広がる夜景。


『先生っ!すごいね』


先生を振り返ると
私を見つめる優しい笑顔。


暗闇の中、先生の瞳が光る。


ドキ…


『気分は戻ったか?』


『あ…はい…』


にこっと笑う先生。


『寒いけど、せっかくだから降りてみる?』



車から降りると
冷たい風が全身をすり抜けていくようだった。



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