スノードロップ
「…司さん、私…」
「…止めてくれてありがとう。君が止めなかったら本格的に君を抱いてたかも分からない…、嫌だよな。初めて抱かれるのがこんな何もない部屋じゃ…」
がらんとした部屋を司さんは眺めた
昔、舞踏会をよくこの部屋でしていた
司郎様は洋楽やダンスが好きでよく舞踏会を開いていた
「…何もなくない…と思います、この部屋は…ここには司郎様がいた思い出があります。物も人も変わってしまったけれど…何もなくなんか…ありませんよ」
私には分からない けどきっとこの部屋には思い出がある
ある意味彼にとっては大事な部屋だ
そんな部屋で彼とキスしていた事
よくよく考えたら恥ずかしい
「…本当、君には…かなわないな」
「…司さん?」
「……有り難う。君がいてくれて良かったよ」
ふっと 笑いながら見渡した
「…確かにここでしちゃあダメだな。親父に見られてるみたいで正直萎える」
はははと笑った
今日みたなかで一番、彼らしい素敵な顔だと思った
「紅々…いつか近いうちに旅行にでも行かないか。出来たらどこか遠くにでも、」
旅行…遠く…、
「…それは、その…あの…」
「顔が赤いなぁ。風邪でもひいたか?」