スノードロップ

+ 願い

〈花柳目線〉







「若旦那様、」






誰かが僕の名を呼んだ





ゆっくり目をあける

時計はまだ昼過ぎだった。



「なんだい。」



机の上に広げられた本を閉じた




うたた寝をしたようだ




「お客様がお越しです。百合の間にお通ししてもよろしいですか」



「いいよ。ちょうどあそこは花を生け終えてたからね。客は誰だい」


障子ごしにうつる影が答えた




「--様です」











「なるほど、お茶を頼むね。」





イスから立ち上がり支度をする







-静かですね、このお宅は…





彼女、一ノ瀬さんが言っていた


静かだ。








人がいないみたいに静かだ










昔はもっと賑やかだったのにな…











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